癒し本

 本屋に行くといまだに「断捨離」とか「捨てる技術」とか捨てる系収納系の本が平積みにされていて、エコエコ言いながら相変わらず世間はごみで溢れているんだなあと感じます。洋服を20袋処分したとか、靴を30足捨てたとか、すさまじい溜め込みっぷりについ日本の行く末を案じてしまいます。

 そんなことを思っていたら、益田ミリの「僕の姉ちゃん」がうまいこと解説していました。結局のところ、収納本もダイエット本も「本気になれば私だってできる」と確認して安心するための「癒し本」なのだと。20袋の洋服を処分した人が、再び不必要な20袋を溜め込まないよう祈るばかりです。

 かく言う私は持ち物がかなり少なくて、くたびれたセーターとかTシャツくらいしか捨てられるものを思いつきません。もともと物欲や所有欲があまりないし、今まで20回くらい引っ越しているので、その時々に持ち物を整理しているから身軽です。そして、引っ越しを繰り返しているせいで、物を増やすことに慎重になってしまったようです。

 3月の震災後、東京から一時的に疎開したのですが、その時に持ち出したものが自分にとって本当に大切なものなのだろうと思います。スーツケースに詰め込んだのは、印鑑通帳契約書の類と当座の着替えのほかは、パソコン、お気に入りのコートと靴、ネパールで買った曼荼羅くらい。あとは手紙や思い出の雑貨(ほとんどがいただきもの)でした。

 パソコンも本当はHDDだけあればいいので、バックパック1個で日本を離れることさえできそうな気がします。蔵を持っているような人は、背負うものが多すぎて大変な人生なんだろうなあ。