出版不況

 たまに大型書店に行くと、凝りに凝った装丁や帯やPOPの洪水で気持ちが悪くなってしまうことがあります。私はそれを本屋酔いと呼んでいます。整然と並べられているのに、目に飛び込んでくる情報量が多すぎて脳が拒否反応を起こしてしまうようです。

 出版不況と言われるようになって久しいですが、なんとか手にとってもらおうと知恵や工夫を集結させた表紙を眺めるたび、編集者や営業担当者の努力がしのばれて胸が痛くなります。本当に短期決戦を強いられているんだなあと思います。

 編集職の友人は、売り上げを伸ばすために次から次へ本を出さないとならないので、じっくり作っている余裕がない、と嘆いていました。

 むかし広告論の講義で聞いた「雑誌はゴミである」という言葉が最近になってよく思い出されます。いまは「出版物はあまねくゴミである」といってもいいのかもしれません。書店に並べられている本が5年後にどれほど残っているのか、その本を作った人々の労力に思いを馳せると悲しくなります。