10年前

 10年前の9月11日、私は上海にいました。半月後にアメリカ留学を控えた友人が日本から遊びにきていました。外で食事をして軽く飲んで遅い時間に帰宅し、彼女がシャワーを浴びている間にメールをチェックすると、「大事件」という件名のメールが届いていました。

 「中国でライブで報道されているのかどうかわからないが、すごい事になった。ニューヨークの世界貿易センタービルにハイジャックされた旅客機と、小型機の二機が特攻でビルに突っ込んだ。続いてワシントンにある国防省ペンタゴン(軍の総括部)の建物に飛行機が突っ込んだ。炎上してしまって、ニューヨークも大混乱だが、CGの映画を見慣れているせいか、いまいち現実感に欠ける。。。現段階での報道ではパレスチナの過激派のテロだといわれているが、パレスチナの単独ではこんな大掛かりなテロは行えないだろうという事で、おそらくイランやイラクなどの中東諸国も協力しているだろうという見方が有力だ。飛行機がハイジャックされて、それが高層ビルに特攻で突っ込むなんてのは、テロ史上でも初の事だ。
 しかし、このままアメリカが黙っているわけがない。アラブの国々の反応次第だが、下手をすると新たに中東戦争が始まってしまうだろう。そうなると、日本もオイルショックになる。歴史の教科書に載るような大事変になる可能性はかなり高い。アラブの出方によっては、えらい戦争になりそうだ。これだけの大規模なテロは(しかもあのアメリカに!)戦後初めての異常事態だ。映画を超えちゃってるよ。
 ビルは炎上した後、一つのビルが倒壊した。ニューヨークの街は煙に包まれている。
 アメリカでは現在、すべての航空機を停止させている。経済もくそもない。株価もどうなることやら。ただでは済まないでしょう。それじゃ。」

 あわてて新聞社系のサイトを開くと衝撃的な写真が次々に現れました。テレビではまだテロのニュースが流れていませんでした。友人にメールを見せ、席を譲ると、彼女は無言のまま長い時間パソコンの前を離れませんでした。

 まるで現実感のない夜でした。

 友人は半月後、予定通りアメリカへ渡りました。